アルコール依存症治療
アルコールは、依存性のある薬物です。
習慣的に使用していれば、誰でもアルコール依存症になるリスクがあります。
当院はアルコール健康障害に関する「依存症専門医療機関」として、東京都から選定されています。
お酒のこんなことであなた自身や家族が悩んでいませんか?
下記6項目のうち、3項目を満たすようならアルコール専門外来の受診をお勧めします。
- お酒を飲みたいという強い欲求がある。
- お酒を止めようと思っても、なかなか止められない。
- お酒を止めると手が震えたり大量の汗をかいたりする。
- 同じ量を飲んでも以前のように酔えない。
- 1日の大部分をお酒のために費やしてしまう。
- 心や体の問題が悪化していると分かっていても、お酒を止められない。
アルコール依存症とは
アルコール依存症は、長期間にわたって大量のアルコールを摂取し続けることによって生じる病気です。
アルコールに対して、強い欲求や制御不能な衝動が生じることが特徴です。
アルコール依存症は、離脱症状と呼ばれる手の震えや発汗などの身体的な症状だけでなく、アルコールに対する欲求を抑えられない心理的な依存も引き起こします。
飲酒への抑制が効かなくなり、自身の意思や性格とは関わりなく飲んではいけない状況で飲んでしまったり、いったん飲み始めると酔い潰れるまで飲んでしまうことがあります。
アルコールが抜けると、イライラや神経過敏、不眠、頭痛、吐き気、下痢、手の震え、発汗、頻脈、動悸などの離脱症状が出てくるので、それを抑えるためにまた飲んでしまうといったことが起こります。
本人が自分の飲酒問題に薄々気付いていても、それを認められず、助けを求めないのもこの病気の特徴です。
もし、飲み過ぎによる心身の不調や問題が繰り返されているとしたら、背景にアルコール依存症が隠れていると考えられます。
また、近年、女性と高齢者のアルコール依存症も増加してきています。
アルコール依存症は、専門治療と援助、自助グループへの参加によって、回復と社会復帰が可能な病気です。
アルコールに関連した様々な問題
内科的疾患
- 肝硬変
- 食道静脈瘤
- マロリーワイス症候群
- 膵炎
- 糖尿病
- 痛風
- 高血圧
- 高脂血症
- 癌(食道癌、咽頭癌、舌癌、大腸癌、肝臓癌、乳癌など)
- 不整脈
- 心筋症
- 骨粗鬆症
- 末梢神経障害
- 筋力低下
- 貧血など
外科的疾患や救急疾患
- 転倒・転落や交通事故などによる外傷
- 骨折
- 脳血管障害
- 大腿骨骨頭壊死
- アルコール離脱せん妄
- けいれん発作など
精神疾患
- うつ病
- 双極性障害
- パニック障害
- 認知症
- 自殺など
仕事や学業への影響
- 遅刻
- 早退
- 欠勤
- 病欠
- 休職
- 作業能力の低下
- 失業
家族への影響
- 家庭内暴力
- 暴言
- 別居
- 離婚
- 家庭崩壊
- 児童虐待
- ネグレクト
社会的な問題
- 酩酊中の喧嘩
- 万引き等の犯罪
- 飲酒運転
経済的な問題
- 借金
- ギャンブル
- 生活の困窮
当院のアルコール依存症治療で心がけていること
治療を行う上で心がけていること
外来や入院の治療では、アルコール依存症の病気の知識を習得していただくことを重視しています。
また、同じ病気を持った仲間が集まる自助グループへ参加することも断酒を助ける効果があります。
アルコール依存症の治療薬は、患者様に応じて必要性を評価して処方しています。
私たち医療者は治療と並行して再飲酒を防ぐ対処法の習得や飲酒を必要としない生活を送ることをサポートします。
アルコール依存症治療 外来と入院治療
アルコール依存症の外来治療
外来治療は断酒目的の方だけではなく、希望や重症度に応じた減酒目的の外来通院にも対応しています。
初診の方の、事前予約は不要です。受付時間内にご都合に合わせてご来院ください。
2度目以降(再診)は予約制です。予約なしでも可能ですが、予約の方優先になります。
また、3ヶ月以上受診されていない方は、再初診(予約不要)としてご案内します。
アルコール依存症の入院治療
飲酒が止まらない時は入院治療をお勧めします。
当院は機能の異なる計3つの病棟で、多職種によるアルコール・リハビリテーション・プログラム(ARP)を行います。
入院治療を通して心身の健康を取り戻し、アルコール依存症についての知識を深めながら自分に適した再飲酒防止対策を考えることで、アルコール依存症からの回復を目指します。
病棟によってARPの内容に違いがあるため、どの病棟での入院治療が適切かは、一人一人の状態に応じてご案内します。
ARPは原則として3か月間のプログラムとなっています。定期的にご本人・ご家族・支援者の皆さまとカンファレンスを行い、治療方針を確認しながら進めていきます。
入院治療プログラムの主な内容
- 勉強会
- 精神科医、内科医、精神保健福祉士、栄養士、作業療法士による講義です。
- ミーティング
- 同じ病を持つ仲間の話しを聞き、自己の問題を整理して話す訓練の場です。
女性のみのミーティングもあります。 - OTプログラム
- 身体を動かし、身体の回復を実感し、しらふの仲間を作り、心身の「快体験」を通して断酒によるプラスの効果を確認します。
- 自助グループ
- 自助グループに入院中から参加します。
- メッセージ
- 自助グループやリハビリ施設を利用している回復者の体験を聞きます。
AA、OB、障害福祉サービス事業所等がメッセージを届けてくれます。 - 酒歴発表
- 飲酒していた時の自分を振り返り、今後の生活設計を発表します。
外来でのアルコール依存症のリハビリテーション
アルコール依存症デイケア
- アルコール依存症からの回復を目指している方が断酒を継続するため、通所してそれぞれの目的に合わせたリハビリテーションに取り組む場所です。
- 多職種(医師、看護師、精神保健福祉士、公認心理師、作業療法士)から総合的な支援が受けられます。
- 仲間やスタッフとの交流を通して円滑な人間関係を築きながら、アルコールリハビリテーションプログラム(ARP)を通して依存症について深く学ぶことができます。
- 生活リズムが整います。
開始までの手順
- 主治医による診察
- 見学体験
- 総合判断
- 開始
主なプログラム内容
アルコール依存症について学ぶ
- 再飲酒予防プログラムみらい
- 認知行動療法
- 読書会
体験を分かち合う
- 各種ミーティング
- 施設紹介体験談
- AA体験
- 回復者体験談
- わくわくライフ
就労について学ぶ
- 就労支援わくわくワーク
体を動かす
- エクササイズ
- ストレッチ
- タオル体操
- ウォーキング
- ヨガ
- マインドフルネスなど
娯楽
- 絵手紙
- 陶芸
- ヨガ
- 映画
- 音楽鑑賞
- ペン習字
- 写経
- 大人の塗り絵
- 学習活動
開催日:月~金(平日) 土日・祝日・年末年始は休み
時間:9:00~15:15
費用:各種医療保険および自立支援医療制度がご利用いただけます
利用期間:原則1年としています
※他の医療機関でアルコール依存症の治療を受けている方の利用相談もお受けしています。
治療中の生活環境に関する相談
こんなときは
ソーシャルワーカーが
ご相談をお受けします!
- 訪問看護やアルコールデイケアのことをくわしく知りたい
- 生活保護はどんな制度なのかな?
- 自助クループについて知りたい
- 家族向けのミーティングがあるって聞いたけど?
- 回復施設ってどんなところ?
- 自立支援医療制度を利用したいけど、どうすればいいの?
- 医療費の支払いが心配だなぁ…
- 働きたいけど、どこに相談したらいいのかな?
アルコール依存症に関するイベント
湧水会
アルコール症センターでは春分の日と秋分の日の年2回、当院を退院された方が集まる催しとして「湧水会」を開催しています。
当院でアルコール依存症の治療をされた方が互いの健康と回復を確認しあう場です。
その他、開催に合わせて季刊誌「湧水」を発行しています。
アルコール症センター講演会・交流会(アルコール支援関係者向け)
当院では年1回、アルコール依存症支援関係者向けの講演会・交流会を開催しています。
交流会には、精神科病院やクリニック、依存症回復施設などのアルコール関連機関のみならず、行政や地域包括支援センター、精神科を持たない総合病院にもご参加いただくことで、相互の理解と連携を深める一翼を担っています。
講演会ではアルコール依存症についての普及啓発や、当院の機能やアルコール症センターの取り組みについて発信しています。
アルコール依存症患者様のご家族へ
アルコール家族教育プログラム
病気や治療、社会資源や対応方法についてなど、ご家族が知っておくと役立つ内容を講義します。
詳しくはこちらアルコール家族ミーティング
アルコール依存症患者様のご家族のための語らいの場です。
自分自身の話をすることや他のご家族の話を聞くことで、情報収集ができたり、自分自身の気持ちの発散や考えの整理ができることがあります。
詳しくはこちら
精神保健福祉士(ソーシャルワーカー)による相談
アルコール依存症の回復過程では、経済面、住居面、ご家族との関係、日中の過ごし方や福祉サービスの利用など、生活の環境に関わる課題の解決が必要なことがあります。その際は、ソーシャルワーカー(精神保健福祉士)がご相談をお受けしています。
外来通院中の方は地域連携室(4番 相談受付)にご相談ください。
入院中またはデイケアを利用中の方は、担当スタッフにご相談下さい。
電話相談も受け付けておりますので、お気軽にご相談下さい。